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東京農工大硬蛋白質利用研究施設にて
こんにちは、野口花琉実です。後編のとりもなおさず圧巻は、先生から伺った最先端コラーゲン研究のお話です。また、研究の最先端を走る先生の原動力ともいえる”動機”を伺うこともでき、それは感動的なものでした。
コラーゲンの作り方を企業へ
花琉実:さて、先生、後編ですが、少し復習しますと、野村先生の現在の研究はコラーゲンだけではなく、様々な植物性原料や動物性原料の有効性の分析や活用法の開発など、医療・化粧品業界や食品業界の企業との共同研究を多岐に渡り行っていらっしゃいます。
初期のコラーゲン研究はどのようにしてスタートされたのでしょうか。
野村教授:そもそもは皮革の産業応用から始まり。現在は、いろいろな原料から生化学用にコラーゲンを作るのが主な仕事となっています。
その当初といえば、医薬用につかえるコラーゲンをつくるのがスタートでしたね。医療用というのは例えば注入するコラーゲンのことです。
また水産物、サメから化粧品用のコラーゲンもつくりました。そしていろいろな企業の人に研修に来てもらって、コラーゲンの作り方を教え、自社で作ってもらう。
始まりはコラーゲンのブームの前、もう25年位になりますか。私自身が研究を始めたのは30年位前でしたね。
化粧品のコラーゲン利用の現状は?
花琉実:正にパイオニアですね。化粧品へのコラーゲン利用はどのような現状でしょうか?
野村教授:最近の化粧品は、基本的には植物オンリーになってきましたね。ただ、肌に塗ったときの体感、テクスチャーを出そうとすると動物性のものを入れないと、しっとり感が出なくなることはありますね。
人間は動物ですので、相性という点では動物性のものは優れていると考えています。化粧品の原料が全部植物に流れると、逆の意味で動物性タンパク質を使っている方が、伸びしろがあるのかな、とも感じています。
だからまだ、コラーゲンは使われているのだと思います。それは動物性タンパク質というよりは、海洋性コラーゲンを使用する事で海のものに近いイメージなんでしょうね。
歴史的には、傷口に馬肉をのせたり、重度の火傷の患部に豚の皮を貼ったりしたと思います。馬の脂である馬油も使うという事もありました。その欠点は、生臭さや臭いにあるんですね。
その点で動物性由来の素材は、美味しくはできますが、無味無臭は大変難しい技術が必要になります。
今のトレンドであるプラセンタは、いわゆる胎盤から抽出した成分ですが、元の臓器は血のかたまりのようなものですので、最終的には消臭との闘いになるというところはあるでしょうね。
また、乳化の技術、分離しない一体型の技術は目を見張るものがありますね。
化粧(品)とスキンケアは別物の日本
花琉実:化粧品については、世界各所で研究開発されています。いつの時代でも女性にとっては必需品ですが。
野村教授:化粧品については、そもそも根本的な捉え方が、欧米と日本とでは違う気がします。欧米では、「ばけてよそおう、化粧(けわい)」と書くように、素肌を見せずにべったりきれいに塗るのが欧米の基本的な考え方だと思います。
花琉実:スキンケアとは別なのですね。
野村教授:そう。日本のスキンケアを突き詰めると、化粧品の部類に入ってこなくなる場合もあるでしょう。マッサージオイルやスキンケア商品は化粧品とは少し異なる、だから動物由来のものも使いましょうか、と。
面白い話があって、石鹸は歴史的に見ると、肉を焼いたときの脂と灰が混ったものだったんですよね。それが、だんだん違う油を使うようになってきました。
流れとしては動物性のものから植物性のものへ、という風潮です。
カギは分子量500!
花琉実:スキンケアという点においてですが、かなり前ですが、サロンでコラーゲンパックなるものを使っていたことがあります。その当時、コラーゲンは経皮吸収しないと言われていましたが、メーカーさんは「この粧剤は塗ることでコラーゲンの生成を促す。」という触れ込みでした。そこのところは、どうなのでしょうか?
野村教授:コラーゲンを食べて効果があるということは間違いないでしょう。では、それ以外では?というところですね。
美容化粧品でも以前は、コラーゲンは経皮から吸収しないので化粧品にコラーゲンを入れることで、保湿効果は期待できるが、塗っても意味がないと言われていました。
しかし、低分子のコラーゲンの入った化粧品を肌に塗ると、真皮に届き、真皮の細胞に反応し、コラーゲンの合成を上げることがわかってきました。コラーゲンやヒアルロン酸は被膜効果があり、水分蒸散を抑えられます。
吸収性のあるコラーゲンもあるので、入らないとは言いにくくなっています。今ではほとんどの化粧品にコラーゲンを入れているのではないかと思っています。
皮膚の表面は親油性ですが、毛穴から吸収されて真皮に到達する可能性も否定できません。それから皮膚バリアが低下している人の場合は、吸収される事も考えられます。
そもそも物質の吸収に関しては、”分子量500″の定義というのがあって、500より小さかったら吸収します。
直接入れば、直接的な刺激になりますね。食べている分には腸管吸収というバリアがあるのですが、塗ると直接、吸収する可能性があるので、皮膚への影響は無いとは言いきれません。
しかし、分子量が小さければアレルゲン性も低くなります。アミノ酸では5つ以上なければアレルゲンにならないと言われています。
アミノ酸が5つ結合するとアレルゲン性が出てくることがわかっています。
だから、それより小さければ問題が少ないと考えられます。ですから、分子量500という定義があるのです。
アムラ、そして美白問題
野村教授:真皮まで入り、肌のコラーゲンの合成を上げるような抗酸化物質もあります。アーユルヴェーダの三大果実の一つ、”アムラ”がそうです。ですから化粧品に入れたりされています。
化粧品には植物性のものを良く使うようになりました。しかし反面、その中の抽出物という表現しかしていないので、詳細には何が入っているかは分からない事が多いですね。物質レベルでみれば、使える容量というものがあります。
やはり濃ければ良いというものではなく、危ない濃度もあります。つまり、効果もあれば危ない濃度もあるという点では化粧品も医療用も同じわけですね。全然効かない濃度もありますし、高濃度にすると毒性を示す場合もあります。
美白化粧品の白斑問題がありました。あれは、美白になるという部分では、ちゃんと化粧品が届いているという証明にもなったわけですね。
ただし、皮膚組織は均一ではないということから白斑が起きてしまいました。皮膚組織が均一でないことに対応しなければならないということで、皮膚に直接塗るということは、常にリスク管理を行わなければならないわけです。
爪、ビタミンC、そして糖化を防ぐ抗酸化物質!
花琉実:コラーゲンを摂ると1ヶ月くらいで変化が体感できる感じですか?
野村教授:1~2ヶ月ぐらいでしょうかね。身体の細胞には記憶のようなものがあって、それに慣れるのに時間がかかるようです。また、自分の身体のコンディションにもよりますので。
女性の方からよく聞くのは、薄爪の人が1ヶ月コラーゲンを摂ると薄爪が改善し、かたくなった、という話です。爪のタンパク質であるケラチンの合成が高くなった結果が、爪に出やすいのですかね。
花琉実:さらに一つ気になるのが、コラーゲンの生成にビタミンCが必要というのは?
野村教授:コラーゲンの合成にはビタミンCが必要といわれているのは、ヒドロキシプロリンができるときの酵素がビタミンCを必要としているからですね。だから、一緒に摂りたいところです。
花琉実:もう一つ気になっているのが、肌の老化についてはコラーゲンの糖化が問題だといわれていますよね。
野村教授:コラーゲンであれば分解されますが、糖がついたとたんに分解酵素が分解しにくくなるんですよね。そうすると、どんどん代謝が悪くなり、糖化したコラーゲンが蓄積されるので、それを防ぐ必要があるわけです。
それを防ぐには、抗酸化物質を摂ることが一番良いと考えられています。植物系の抗酸化物質を入れることで、コラーゲンの糖化を防ぐことができます。ですから、ハーブティーなどを合わせて摂ることも有効ですね。
鉄腕アトムの皮膚を創る!!
花琉実:ネットを検索してみますと、例えば、資生堂、ファンケル、明治、サントリー、富士フィルムといった有名各社がこぞってコラーゲンの効果や研究成果について紹介しています。
その辺りを拝見すると、真皮幹細胞やダメージコラーゲンなど、着目している部分もいろいろのようです。
先生が施設長をされている硬蛋白質利用研究施設の講義動画でも、「神経再生誘導チューブ」や「組織中への血管誘導」「代替皮膚」などの最先端の再生医療への利用が紹介されています。
今後のコラーゲン研究を視野に、先生にとって、今もっともHOTな研究テーマを教えてください。
野村教授:例えば、コラーゲンを細胞培養基質として使用し、皮膚の代替皮膚つくろうとすると、問題はアレルギーとの闘いであることが予想できますよね。
けれども神経と神経をコラーゲンでつなげたということについては、まず我々は素材の特性を知っているので、試しにやってみたら出来てしまったので医療用として使えたということ事が多いですね。
そこで、後からそのメカニズムを調べます。血管については、これからまだまだ研究の余地はあるでしょう。生化学の今後の研究に期待ですね。
今、一番やってみたいのは鉄腕アトムの皮膚をつくることですね。
シリコンやウレタンとかではなくて、本当の皮膚っぽいものが出来ないか。これは昔からの夢です。
だって手塚治虫の世界でいけば、もう鉄腕アトムが飛び回っていてもおかしくない年ですよね。
工学的な研究者は天然物は使わない傾向にありますが、我々が実現したいのはハイブリットですね。天然素材と合成素材を使って人に近づける。
例えば映画のターミネーターのように、皮膚再生を促す構造ができれば一番良いと考えています。これからは、そんな世の中になりそう。
皮膚再生を促す組織構造をつくりあげれば、ちょっとでも原型が残っていれば増殖し、すみやかに元に戻る。組織培養でやると再生が追いつかないので、それをアシストしてあげるものをつくる。ちょっと置いておけば心臓になる、関節になる、皮膚になる、と言った感じですかね。
~みんな、それを、夢みてやってきた~
花琉実:それをコラーゲンベースでやるわけですね!
野村教授:そうそう。髪の毛がうすくなったら植毛するのでなく、ちょっとコラーゲンをおいておいたらバッと生える(笑)、というのも面白いですね。
花琉実:出来たら良いですね。
野村教授:いろいろとやってみると、触感や硬さとかをコントロールするのが難しいですね。 均一なものはつくるのが容易ですが、身体からみると異物になってしまう。場所によって皮膚の硬さも微妙に異なるんですよね。
感触を測定する機械はあります。ですから、その測定結果にあわせて作ってみましょうか、と。さらに3Dプリンターで使える素材であれば申し分ないかもしれませんね。レプリカが出来ちゃいます。それと差し替える。ドラエモンの誕生ですね。
~みんな、それを夢みてやっていた~
最初はみんなそれを夢みて研究を始めたんですよね。それを忘れずに続けることです。
最近は、イカの中骨に注目しています。これは、食べると必ず残る部位なんですよね。これを細かくすると水持ちの良い素材ができます。
これにコラーゲンを混ぜると、モチモチのもっと硬いしっかりしたものができあがります。これで軟骨、腱、靭帯に代わるコラーゲン様の器官が出来ると良いですよね。
美容と健康意識の高いビューティーコンシェルの読者の皆さまへ
花琉実:ぜひ、実現してください!あらゆる病気から命をながらえますね。
最後に、ビューティコンシェルをご覧になる美容と健康意識の高い読者のレディースたちのお肌と骨密度向上へ、アドバイスをお願いします。
野村教授:これまでお話したことをご理解いただいたとしたら、これからはぜひ、ご自分に合う、自分の好きなコラーゲンを探して欲しいですね。
コラーゲンには、いろいろなタイプがあります。それぞれに原料も異なります。
いつもお話させていただくことは、食事が重要で、そのバランスなのです。一汁三菜、一汁一菜でも良いです。30何品目を食べるのは、どだい無理ですから、自分に合ったものを探すのが良いと思います。
そういう意味で、食事のバランスは重要だと思います。嫌いなものを無理して食べるのは良し悪しです。標準化された人に必要であったとしても、自分にとって本当に必要かどうか、は別ですからね。
ちょっとしか食べられない人でも、それで健康的に維持できているのであれば、それで良いわけです。身体は維持できていると思います。
それを例えば、補助食品として、コラーゲンでアシストしてあげれば良いわけです。私は自分に合うコラーゲンを選べといつも言っています。
昔より認知度は上がっているから、摂らないより、摂った方が良いと考えています。
自分の適量は絶対あります。いつ食べるというのも、自分のスタイルで良いわけです。
まずは自分で体感してみれば。自分のスタイルを確立し、健康さを極めるためには、なによりも自分の体感が大切になります。
サプリメントを1~2ヶ月摂って効果(体感)がない(変化がない)ようでしたら止めて良いと思います。自分の食生活で足りているということですからね。
~自分の体感を信じた方が良い~
野村教授:自分の体感を信じた方が良いです。食わず嫌いはダメだよとも言っています。一回食べたら大概わかります。良質のタンパク質を意識して食べてみて、体感してみるのが良いです。
花琉実:野村先生、ありがとうございました。私もさっそく自分に合ったコラーゲンの摂り方を、自分の体に聞きながら見つけていきたいと思います。
おわりに
今回のインタビューで野村先生の研究への思いなどを伺って感じたのは、「生き物への愛」でした。
研究の始まりから現在まで脈々と流れる動機の一つに「もったいない」というものがあります。
これは、私達人間が他の生き物たちの命を奪い産業に利用してきましたが、その命を、たった一つの目的だけではなく、活かせる部分は出来るだけ活かしたいという生き物への愛があると感じました。
研究という細分化されたミクロの世界の話を伺いましたが、その言葉の端々に、先生の温かいお人柄が感じられる素敵なインタビューでした。
また、健康と美容を実践する私たちにとって、大変有意義な情報は今後の自分磨きに活かしていきたいと思います。
ありがとうございました。野口花琉実でした!
野村教授が推奨するコラーゲンの含有量と、吸収されやすい低分子を実現したニッピのコラーゲン100。株式会社ニッピは硬蛋白質利用研究施設と研究協力協定を締結する企業の一つ。
ニッピのコラーゲン
サロンも運営しております。ぜひお越しください。
▼自由が丘 植物療法サロン はるゆみ | ビューティーコンシェル
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聞き手:野口花琉実