幸せの蕾はいつもお客様から~セラピスト人生を鑑みて~
2018.4.10
強く、優しく、美しく。そして自分らしい生き方を探し続ける現代女性たち。セラピストは、多くのお客様との出会いを通して、さまざまな女性のライフスタイルを垣間見ることが出来ます。今回のコラムでは、2度の悲しみを乗り越え、新しい命をお腹に宿した勇敢で美しい女性との交流をご紹介します。
4月に入り、新生活に心躍らせる毎日の新入学生や新社会人の皆様を街中でよく目にしますが、あっという間に4月も中旬に差し掛かろうかとしています。
先日、数年来のお客様の臨月直前トリートメントに入らせていただきました。
マタニティトリートメントは体調やお肌と相談しながら繊細な判断を求められる、キャリアセラピストではないと難しいトリートメントです。
妊娠初期はもちろんのこと、妊娠後期で体調を崩される妊婦さんも多いのでとても繊細に挑みます。
長年セラピストをしていると、多くのお客様との出会いを通して、さまざまな女性のライフスタイルを垣間見ることが出来ますが、今回の臨月トリートメントを担当させていただいたお客様(A子さま)とは特にさまざまな局面をご一緒させていただきました。
喜びを分かち合う幸せ
遡ること数年前、A子さまの独身時代にいつもより何だかうれしそうな雰囲気を感じ取ったため、
“何か良いことでもありましたか?”
とA子さまに尋ねると
“彼氏が出来ました!”
とのこと。
私までうれしくなり、それ以降、トリートメントのたびに彼氏さんとの進捗を話される楽しいそうなA子さまのお姿を見ては、やっぱり女性って恋をするとどんどん綺麗になるものだな、とつくづくと感じました。
それから1年くらい過ぎしばらくした時のこと。“結婚することになりました!”とまたもやうれしいご報告を受け、それからはブライダルトリートメントに突入。
とても聡明でお綺麗なA子さまですが、お酒好きで意外と自分にあっさりというケア事情を知っていた私は、挙式までに何としても“完璧な美しい花嫁”に仕上げなくては!と徹底的に鬼軍曹化して(笑)、指導とトリートメントの日々を過ごし、無事にハワイでの挙式当日をお迎えになられました。
ハワイに向かわれる直前にトリートメントをし、作り上げた美肌とデコルテ~フェイスラインを保つための機内での過ごし方も詳細に説明。
よく女優のお客様などには、撮影直前までフェイスラインを保つ方法のアドバイスをさせていただくのですが、もう私自身の気合の入れ方はそれ以上(笑)
A子さまも嫌な顔せず(汗)、真摯にアドバイスを受け止めてくださったお陰で、挙式当日のお写真を後日拝見しましたが、その美しさは“完璧な花嫁様”そのもの。
ご帰国され新婚生活が落ち着かれ、再び定期的なトリートメントに通ってくださっていたある日、“妊娠しました!”とご報告が。独身時代より早くお子様が欲しいとお話されていたA子さまの順調な幸せが私もうれしく、一緒に喜びました。
しかし、喜びを一瞬で消してしまう出来事が
残念なことに流産をしてしまったA子さま。
きっと毎日を何とか気丈に振る舞い、旦那様にも心配させないようにと生活されているのだと感じました。
流産されてからもトリートメントに定期的に来られるのは、自分メンテ以上に、自分を取り戻すための習慣だったのだと私は感じました。
私から何とお声がけをしたらいいのか、本当に私自身悩みました。
今までも多くのお客様のご妊娠や、時に流産のご報告も受けますが、その度に“私って無力だな”と思う気持ちと、無力だからこそお客様のお気持ちに寄り添い続けることしか出来ない。だからそれだけは止めないと心に決めたものです。
A子さまは取り乱すこともせず、私にまでお気を使ってくださいました。
なんて勇敢な、美しい女性なのだろうと感動すら覚えたことを今でも思い起こします。
2度の悲しみ、そして…
そして再びご妊娠するチャンスが…。しかしその願いも叶いませんでした。
2度の流産。
非情にもA子さまの願いは叶うことなく、時間だけが過ぎていったある日のこと。
いつもとは少し様子が違うA子さまに私は気づき、そっと何かあったのか聞いてみたところ、3回目のご妊娠で今のところ順調だということ。
手放しで喜ぶのはまだ早いと思い、“慎重に、だけどリラックスして楽しみながら生活しましょう”とお伝えしました。
マタニティトリートメントの不思議
それから時が過ぎ、ある日のトリートメント中のこと。
あっ、男の子だ!
そう思い私がA子さまに聞いたところ、まだどちらかわからないとのこと。そして先日最後の臨月トリートメントで、TAMAKOさんが最初に当てた通り男の子でした!とご報告を受けました。
マタニティトリートメントはとても不思議で、トリートメント中は無言にも関わらず、母体を通してお腹の赤ちゃんと会話をしている感覚になるのです。
そして時々、
“今お母さまはリラックスしているから良い子にしてね。”
“あっ、今の手技は少しビックリしたかな?”
“もう、本当にやんちゃなんだからお腹の中で動き回らないの。”
そんな会話をすることがあるのです(笑)
お腹の動きが変わり、膨らみ方を見てはリズムを整え、強弱をつけてストロークを変えトリートメントしていきます。その中で自然と会話をしているのだなと思います。
そんなA子さまの赤ちゃんとの最後の会話を交わし、無事にトリートメント終了。最後は親戚のおばちゃん気分です(笑)
A子さまは5月上旬にご出産予定。
2回の流産を乗り越え今、新しい命に巡り会える奇跡
そしてお帰りになる際に何が良いのか最後まで悩みましたがと、お心遣いの手土産と一緒に“ありがとうございました。”とご挨拶をいただき今まで堪えていた涙が流れそうになりました。
ありがとうございました。それは、私のセリフです。
最後の最後まで自分より周りに気遣いをされるA子さまの心根の美しさ、強さ。
きっと素晴らしいお母さまになるのでしょう。
現代女性の生き方は千差万別。
自分の生き方、幸せは自分で決める。
それこそが一番の美しさだとA子さまに教わったそんな4月です。
悩みも苦しみも生きていればこそ感じられる幸せなのだと大きな真実を教えてくださり、A子さまありがとうございました。
※コラム、写真はA子さまの許可をいただいて編集しています。