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短歌にみる植物物語 ~11月 椿~

2019.10.31

新元号が令和と決まったのをきっかけに脚光を浴びた万葉集。12月はそんな万葉集の中から「椿」を詠んだ一首を選んでみました。古くから日本人の生活の中で愛でられ、有効利用されてきた椿の効果や使い方などと共にご紹介します。実は私たちにもお馴染みの椿油は縄文時代から使われていたそうですよ!

短歌の中に登場する植物にスポットを当てる「短歌にみる植物物語」、12月の植物は「椿」です。

古くから日本人の生活と共にある椿は、その痕跡は縄文時代までさかのぼれるそうです。

そんな椿を詠んだ一首を新元号にちなみ『万葉集』から選んでみました。

椿の効果や使い方と共にご紹介します。

短歌にみる植物物語 ~11月 椿~

奥山の 八つ峰の椿 つばらかに 今日は暮らさね 大夫の伴  ―大伴家持

【原文】
奥山之 八峯乃海石榴 都婆良可尓 今日者久良佐祢 大夫之徒

【読み】
奥山の 八峯(やつを)の椿 つばらかに 今日は暮らさね 大夫(ますらを)のとも

【意味】
深い山の峰々にゆったりと咲く椿のように、友らよ、今日は一日ゆっくり楽しく過ごしてください。

天平勝宝2年3月3日、大伴家持(おおとも の やかもち)が越中の国主として赴任していた時に、友人たちを館に誘って行った宴席での挨拶のような一首です。万葉集19巻4152に収められています。

旧暦の3月は現代の2月にあたるのでしょうか。寒椿が見ごろだったのでしょう。

「八つ峯」には「あちらこちらの山」という意味があるので、当時から椿の花が人の暮らしの側にあり、目を楽しませていたことがわかります。

大伴家持 718年(養老2年)~785年(延暦4年)

狩野探幽『三十六歌仙額 中納言家持』

公卿で歌人でもあった大伴旅人(おおとものたびと)の長男。官僚としての仕事をしながら、歌人としてたくさんの歌を残しています。

彼の最も大きな業績は「万葉集」の編纂に加わったことでしょう。

「万葉集」全20巻4516首のうち、家持の歌は473首。万葉歌人の中でも一番多く歌を残しています。

越中に赴任している時の歌が330首と最も多く、当時のその地方の様子を知る上でも貴重な資料ともなっているそうです。

椿

学名:Camellia japonica

科名 : ツバキ科ツバキ属(カメリア属)

ヤブツバキが原種とされています。5~10Mの高木で、開花期は11月~12月と2月~4月。

名前の由来は、

  • 葉が厚いので「あつば木」
  • 葉が艶やかなので「艶葉木(つやばき)」
  • 葉に光沢があるので「光沢木(つやき)」

など諸説あります。あんなにお花が綺麗なのに、葉にまつわる由来ばかりというのは面白いですよね。

椿の種子から採れる「椿油」は縄文時代から人々の生活に利用されていたそうです。

日本書紀には天武天皇に椿の花を献上したという記載があるそうなので、花も古くから珍重されていたことがうかがえます。

椿の品種とその名前

椿には現在、数百種類も品種があるそうです。

調べてみたのですが、花も美しいのですが、それぞれの花につけられた名前がとても素敵でした。いくつかご紹介します。

  • 玉霞(たまがすみ)
  • 加茂本阿弥(かもほんなみ)
  • 都鳥(みやこどり)
  • 月の都(つきのみやこ)
  • 初雁(はつかり)
  • 蝦夷錦(えぞにしき)
  • 光源氏(ひかるげんじ)
  • 太郎冠者(たろうかじゃ)

などなど… 命名のセンスに驚かされますね。

調布市にある神代植物公園では、260品種の椿を観賞することができるそうですよ。

椿油とカメリアオイル

ホホバオイルやオリーブオイルと共に、椿油は世界の3大オイルとして認められています。

椿油はヤブツバキの種子から採油されるもので、昔から黒髪を綺麗にすると言われています。

子供の頃、母に買ってもらった柘植の櫛を、椿油をたっぷりと染み込ませたガーゼに包んでその上から油紙で包んで3か月ほど置き、しっかりと椿油が染み込んだ櫛にしていました。

そうすると以後ずっと使っていても櫛の歯の間に汚れが付かないのです。

早く使いたくて待ち遠しかったのを覚えています。

椿油には、美髪効果だけではなく紫外線防止の効果もあるので嬉しいです。

アロマセラピーでもカメリアオイルはよく使われています。

厳密にいうと椿油とカメリアオイルは少し違いがあります。

椿油はヤブツバキの種子から採られるもので、主成分であるオレイン酸を80%以上含んでいます。

カメリアオイルはその他のカメリア属の種子から採られていて、オレイン酸の含有量は50%程です。

カメリアオイルの多くは、「チャノキ(Camellia sinensis)」の種子から採られています。

人間の皮脂にはオレイン酸が40%程含まれているので、どちらも肌馴染みが良いと言えます。

椿油もカメリアオイルも髪だけではなくお肌にも有効です。

皮膚を柔らかくする作用、抗菌・抗炎症作用があるのでニキビ予防、紫外線からの保護のため日焼け止め効果もあります。

【おすすめ椿油を入れたヘアーローション】

50mlのスプレー容器に、精製水45ml、無水エタノールもしくは植物性グリセリンを5ml、ローズマリーの精油(黒髪を綺麗にすると言われています)を8~10滴、椿油2~3滴入れて完成です。

椿油を入れ過ぎるとベタついてしまうので注意をしてください。

私はかなり乾燥髪なのですが、それでもこの量で充分です。頭皮が油っぽい方は椿油を入れない方が良いでしょう。


椿の花は、花全体がポロっと落ちるので、縁起が悪いと言われることもありますが、冬の澄み切った青空に咲く紅や白の椿の花はやはり美しいです。

パッと散るのもかえって潔くて良いかもしれませんよね。

この記事を書いたコンシェルジュ

佐佐木景子/アロマプロデューサー