不老長寿の菊
2018.9.3
9月の年中行事と言えば9日の「重陽の節句」。陽の気が最大になり重なる日で、大変おめでたいとされています。菊のお祭りとしても有名です。今回は古くから日本人に愛されてきた「菊」にまつわる不老長寿の伝説と、菊の健康効果について考えてみます。食用菊のおすすめの食べ方などもご紹介します。
暦の上では秋とは言うものの、まだ残暑の厳しい9月。お彼岸までは気持ちの良い秋風はお預けなのでしょう。
9月の年中行事と言えば9日の「重陽の節句」。陽の気が最大になり重なる日で、大変おめでたいとされています。菊のお祭りとしても有名です。
菊の季節にはちょっと早いのでは?と思いますよね。陰暦の9月は現在の10月なので、各地の菊にまつわる催しは10月から11月に行われています。
今回は菊にまつわる不老長寿の伝説と、菊の健康効果について考えてみます。
菊慈童(枕慈童)のお話
中国に古くから伝わる「菊慈童(きくじどう)」の物語は、能の演目などにもなっているので、ご存知の方も多いのではと思います。
紀元前1000年頃の周の時代。時の王の寵愛を受けていた慈童という少年がいました。ある日慈童は誤って王の枕をまたいでしまいます。当時は、王の枕をまたぐと死罪と決まっていたのです。王は法を守らないわけにはいかないが、あまりに可哀そうだと思い慈童を流刑としました。
慈童は、1本のつり橋を渡らないと行きつくことができない山奥に連れて行かれます。そして2度と戻って来られないように、つり橋は切り落とされてしまいます。
時は流れ魏の時代。山奥に霊水が湧き出ているところがあると王とその従者が山奥に向かいます。そこで一人の少年と出会い、彼が周の時代の慈童であると知ります。何と800年程の歳月は流れていました。
慈童は流刑にされるときに、それを憐れんだ王から「具一切功徳慈眼視衆生、福聚海無量是故応頂禮」の2句を書き付けた枕を密かに渡されていました。そして、毎朝唱えるようにと言い渡されていたのです。慈童は忘れないように、その句を菊の葉に書き、その葉の露を飲んで生き延び、不老不死の仙人になっていたのでした。
慈童はこの菊の霊水を魏の王に伝え、重陽の宴には菊の酒が用意されるようになりました。その後、菊は不老長寿の霊薬として長く人々の生活に根付いていったということです。
食用菊の健康効果
日本の象徴とされている菊ですが、日本に古くから自生しているものではなく、もともとは薬草として中国から伝えられたものです。中国や台湾では、菊は古くから薬として利用されていました。
日本の食用菊として代表的なものとして、東北地方の「延命楽(えんめいらく)」や「阿房宮(あぼうきゅう)」、お刺身に添えられている愛知県の「小菊」などがあります。
食用菊の健康効果は以下の通りです。
・デトックス作用:菊には体内の解毒物質の働きを助ける成分が含まれています。
・眼精疲労:ビタミンB1が含まれていて眼精疲労に効果があります。
・美肌効果:ビタミンEが含まれていて、その抗酸化作用から美肌効果が期待できます。
・発ガン予防や悪玉コレステロールを抑える:クロロゲン酸とイソクロロゲン酸が含まれていて、その効果が期待されています。
・尿酸値を抑える:菊花ポリフェノールには、体内で作られる尿酸の量を減らす作用、また尿酸の排泄を増やす作用があるとされています。痛風の方には朗報ですね。
食用菊の食べ方
菊の健康効果が分かったところで、今度は美味しく食べる方法をご紹介します。
食用菊は、少しお酢を入れたお湯でゆでておひたしにしたり、花びらをサラダに散らしたり、いろいろとアレンジができます。
花の時期は短いので、花びらを乾燥させた物を利用すると1年中楽しめます。
私は山形名物の菊のお漬物が大好きです。胡瓜、茄子、茗荷、紫蘇、青唐辛子などたくさんの野菜と一緒にお醤油で漬けてあるものです。
友人からお土産でいただいて以来、我が家の定番の「ご飯の友」になっています。
季節ごとの植物の恵みを生活に取り入れると、体も心も豊かになります。
物より心の時代。植物と共に過ごす安らぎを大切にしたいと思うこの頃です。