日本の薬湯十二ヵ月 ー9月 野菊湯ー
2017.9.1
日本人には馴染み深い菊の花。菊にはさまざまな効果が期待でき、薬用、食用、観賞用など多くの種類の菊が栽培されています。季節に合ったさまざまな薬湯をご紹介するシリーズ「日本の薬湯十二ヵ月」。9月の薬湯は野菊湯です。菊の歴史と共に、野菊湯の楽しみ方や効果をご紹介します。
9月と言えばもう秋。まだ残暑の厳しい日が続きますが、一日一日と秋は近づいてきています。
9月9日は重陽の節句。陽の気が重なるおめでたい日ですね。
古く中国では菊は不老長寿の花とされていて、重陽の節句にはお酒に浮かべて飲んだり、お風呂に浮かべたりした習慣があったそうです。
一方日本では、菊や野菊にはさまざまな効果が期待できるということで、薬用、食用、観賞用など多くの種類の菊が栽培されています。
また、野菊湯という薬湯に入る習慣があります。
今日はそんな野菊の薬湯について楽しみ方や効果を紹介します。
菊・野菊の特徴と歴史
一般的に菊と言われている花は、キク科キク属の植物で中国から伝来して日本で栽培されているものです。
野菊という植物は無く、キクによく似た花を咲かせる植物の総称とされています。
キク科の野生植物は約350種類もあるそうです。
生薬としての菊。その効用・効果
中国では2000年以上前から薬用として菊を栽培をしていた記録があります。
菊茶として飲んだり、食用に用いたりします。
日本で一般的にみられる観賞用の菊ではなく、食用の菊を用います。
日本でも食用菊は多く使われていますよね。お刺身の飾りになっていたり、お料理に混ぜたりします。お刺身を食べる時には飾りになっている菊の花びらをちょっと混ぜて食べてみるのも良いのではないでしょうか。
菊の効果としては、抗炎症作用、抗菌抗真菌作用があり、風邪や頭痛や悪寒などに用いられます。
また、「目の病気には菊の花」と言われていて、視力の改善、目の充血や炎症などに効果があるとされ、目に不調があった際に食べたり飲んだりされていたそうです。
「菊花茶」と野菊のお茶「ヨメナ茶」。効果・効用
食用菊の花の部分を乾燥させたものを菊花(きくか・きっか)と言います。
菊花茶は特に目に効果があるとされています。現代人は目を酷使しているので、眼精疲労に効果があるなんて嬉しいですね。
また、体表にこもった熱を冷ます効果や、長く飲み続けると老化の抑制に効果があるとも言われています。嬉しい効果ばかりです。
ハーブティーで有名なカモミールもキク科の植物です。乾燥させた菊花茶は、カモミールのような優しい味わいで、心も体もリラックスさせてくれます。
食用や漢方薬局で売られている菊花を使用するのが安全でおすすめですが、自分で作りたい!という方は、ヨメナ茶を試してみてはいかがでしょう?
【ヨメナ茶の作り方】
ヨメナは代表的な野菊の一種です。北海道以外の日本各地で道端や野原などに咲いています。
まず、ヨメナの全草を陰干しにして、よく乾燥させ細かく刻んでおきます。
油をひかないフライパンで軽く炒って、普通のお茶のように急須に入れて熱湯を注いで頂きます。
野菊のお茶「ヨメナ茶」は利尿、膀胱炎、腫れ物などに効果があるとされています。
野菊湯の作り方と効果
薬湯として主に使われる菊は、野菊の中の竜脳菊です。血行を促進して疲労の回復に役立つなどの効果が高いとされています。
採取した菊をそのまま使用することも乾燥させて使用することもできます。生薬として売られている乾燥した花や葉を使うこともできます。
30gほどを布袋に入れ、熱湯をかけて蒸らした後、お湯と布袋を一緒にお風呂に入れます。ちょっと面倒という方は、竜脳菊の花をいくつか湯船に浮かべるだけでもOKですよ。
【野菊湯の効果】
野菊の薬湯には以下のような効果が期待されます。
- 血行促進
- 保温効果
- 代謝の促進
- 疲労回復
- 腰痛の緩和
- 野菊の香りによるリラックス効果
菊の被綿(きくのきせわた)という習慣をご存じでしょうか?
重陽の節句の前の晩に菊の花に綿を被せ、一晩おいて菊の香りをたっぷり含んだ夜露をしみ込ませます。翌日その綿で体を拭いて健康と長寿を願うというものです。
9月に菊の花はまだ咲いていないよ~!という声がきこえてきそうですね。
昔の暦は太陰暦なので、現在の太陽暦に直すと1ヶ月ほどずれます。2017年の暦でみると、10月28日が太陰暦の9月9日重陽の節句になるようです。
菊の花が綺麗に咲いたら被綿をやってみてはいかがでしょう。