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養生今昔 3月~食養生~

2020.3.5

感染が広がっている新型コロナウイルス。若い方や元気な方は感染しても軽症で治癒するケースが多いようです。このことからも、常日頃から健康な体作りである「養生」を心がけることが大切だということを実感します。今回は江戸時代の養生書『養生訓』から、貝原益軒の考える食事に関する養生をお伝えしたいと思います。

新型ウイルスの感染拡大で、日常生活や社会経済に大きな影響が出始め、日本のみならず世界的な厳戒態勢が広がっています。

14世紀にパンデミックを起こした伝染病ペスト(黒死病)では、1億人の人が亡くなったそうです。当時の世界人口が4億5000万人程でしたので、20%以上の人が亡くなったことになります。

医学の進歩した現代では、そのようなことは起こらないにしても、目に見えないウイルスに対しては「うつらない、うつさない」を徹底していきたいものです。特に医療の充実していない国や地域には広がらないことを願うばかりです。

今回の新型ウイルスの場合は、重症化するのは基礎疾患のある方やご高齢の方で、若い方や元気な方は感染しても通常の流行性感冒と同じように軽症で治癒するケースが多いようです。

このことからも、常日頃から健康な体作りである「養生」を心がけることが大切だということを実感します。

今回は江戸時代の養生書『養生訓』から、貝原益軒の考える食事に関する養生をお伝えしたいと思います。

貝原益軒の食養生「禍は口よりいで、病は口より入る」

益軒は古人のこの言葉を取り上げて、慎み深く生活することが大切だと『養生訓』の中で言っています。

余計なことを言うのは禍の元ですし、食べるものや食事に注意をしないと体を損なうということです。

名言!と納得してしまいました。これは現代でも言えることですよね。

『養生訓』に記された食事の摂り方

『養生訓』には食事の摂り方についてもその方法が細かく記されています。

・食事の回数は朝晩2回。常に腹七・八分目にとどめ、前の食事が消化しきれていないのに、次の食事を摂ってはいけません。

・朝ご飯より晩ご飯は少なめにして、食べたものが全て消化されてから寝るようにします。

・熱いもの冷たいものはダメで、飲食は暖かいものを心がける。お湯やお茶も熱すぎないようにして、少しだけ飲むようにします。多く飲むと水分が鬱滞するそうです。

現代では常温は同じですが、お水をたくさん飲むこと推奨される傾向があるので、東洋医学の考え方との違いを感じます。

・疲れが酷いときは食べない方が良い。

疲れやストレスで食べてしまう人、お腹が空くと寝られないという人も多いようですが、その欲望を満たしていると、体を痛めてしまうそうです。

「五味偏勝」はダメ!

『養生訓』に記された「五味偏勝(ごみへんしょう)」とは、食事の際に一つの味を多く摂り過ぎることです。

好きだからといって、甘いものや辛いものばかりを食べていると体に滞りがでて害になると益軒は言っています。

・甘いものを食べ過ぎると、お腹が張って痛みが出ます。

・辛いものを食べ過ぎると、気が上がり、皮膚にできものができ、目を悪くします。

・塩が強いものを食べ過ぎると、血が乾いて喉が渇くので水を多く飲み「湿」の体質となって消化器系を害します。

・苦いものを食べ過ぎると、消化器系の力が弱まります。

・酸っぱいものを食べ過ぎると、気が縮まります。

1つの味に偏らないように、それぞれの味覚を楽しむことをすすめています。

食後の運動

益軒は『養生訓』中で、食事の後は動かなくてはいけないと言っています。

食事の後はゆっくりと体を休めるようにと言われて育ったので、これには驚きました。

若い人は軽めに弓や槍や太刀の稽古をしたり歩いたりして体を動かすようにします。

老人もなるべく動くようにして、長い時間座っているのは、気や血を滞らせるので良くないとしています。

横になるなどもってのほかのようです。

しかし、過度の運動は避けるようにとも注意しています。

現代では食後はゆっくり休むことを推奨されていますよね。

そういえば、食後休む間もなく後片付けと台所の清掃をする友人は、生活習慣病とは縁の無い体型と健康を維持しています。やはり動いた方が良いのかもしれませんね。

また、酒食をした後は、天を仰いで酒気を吐き、手のひらで顔や腹や腰を撫でて気を巡らせることとしています。

『養生訓』に記された、食べ合わせの悪いもの

『養生訓』の中の1部を紹介します。

食品 食べ合わせの悪いもの
猪肉(ブタニク) 生姜、蕎麦、胡荽(コリアンダー)、炒豆、梅、牛肉、鹿肉、スッポン、鶴、鶉(うずら)
牛肉 キビ、ニラ、生姜、栗子(甘栗)
兎肉 生姜、橘皮、芥子、鶏、鹿、獺(かわうそ)
鶏肉と玉子 芥子、ニンニク、玉ねぎ、もち米、スモモ、鯉、兎、獺、スッポン、雉、海老
雉肉 蕎麦、キクラゲ、胡桃、フナ、ナマズ
野鴨 胡桃、キクラゲ
鴨子(アヒルの玉子) あんず、スッポン
雀肉 あんず、醤(ひしお)
鮒魚 芥子、ニラ、飴、鹿、芹、雉
柿、橘、棗
銀杏
麦醤 蜂蜜

他にも、酒の後に辛いものを食べると肋骨を緩めるとか、緑豆餡を入れたわらび餅は人を殺す、などたくさんあるのですが、この辺でやめにします。

また、『養生訓』には病気の人の食事法や漢方薬との食べ合わせなど、かなりの量の情報が詰まっています。

それにしても何とバラエティーに富んだ食材でしょう。鶴や獺(かわうそ)まで食べていたとは驚きです。


『養生訓』の書かれた当時は、食材の保存も難しく、細菌やウイルスの知識も無かったので、食事には今以上に注意が必要だったのでしょう。

新鮮なものを食べることや保存に注意を払う様子が伝わる記述が数多くありました。

現代では、購入してきたものをすぐに食べれば、腐っていることはまずありません。

衛生的になり「ただちに健康への被害はない」と言えるかもしれませんが、その植物や動物や魚などの食材がどのように育ったかという部分では疑問が残ることもあります。

いつの時代も、形は違っても「食」には注意を払わなくてはいけないのでしょう。

この記事を書いたコンシェルジュ

佐佐木景子/アロマプロデューサー

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