ヒアルロン酸、グルコサミンで膝の痛みは消えるのか 〜軟骨との関係とは〜
2015.3.27
スポーツの現場だけでなく、多くの方にとって身近な問題である膝の痛み。今回は、その多くの痛みに関係する「軟骨」についてお話をさせていただきたいと思います。そもそも軟骨とは何なのか?ひざ痛にはヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチンなどを飲めば治るのか?などといった、素朴な疑問にお答えします。
皆さま、はじめまして。アスレティックトレーナーの新井康希と申します。
このコラムでは、少しでも身体に関わるお仕事に携わっている(携わりたい)皆さんのお役に立てるように、解剖学、スポーツ医学、リハビリ、東洋医学、栄養学など、実際の講義でお話する内容に加えて、スポーツ現場や臨床現場のことなど、幅広い分野について自由気ままに綴って行こうと思っております。
どうぞお付き合いください。
軟骨とはそもそも何なのか
まず第1回目は、ちょっと遡りますが、2/27の日本経済新聞で「人のiPS細胞から軟骨作製に成功した」という記事について。
京大、iPSで軟骨作製 肘・膝など関節治療に道 (2015/2/27 2:00)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG26H5M_W5A220C1EA2000/
「iPS細胞」については何となく聞いたことがあると思いますが、「軟骨」については皆さんご存知かと思います。(よく、学生時代に居酒屋で注文したあの軟骨です)
馴染みのある言葉だと思いますが、意外と分かっているようで分かっていないのが、この″軟骨″なんです。
まず、「軟骨」とは、平滑で弾力性に富んだ軟部組織のことを言います。
さらに、軟骨基質の成分により「硝子軟骨」、「線維軟骨」、「弾性軟骨」に分類されますが、膝などの関節の骨を覆い衝撃吸収の役割をするのが「硝子軟骨(しょうしなんこつ・がらすなんこつ)」です。
硝子軟骨(しょうしなんこつ、またはがらすなんこつ、英: hyaline cartilage)とは関節軟骨、骨端板、肋軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨などを構成する軟骨。硝子軟骨の基質はゲル状であり、その約70%は電解質を含む水分で構成されている。軟骨細胞は基質中の軟骨小腔内に存在する。
(出典)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%9D%E5%AD%90%E8%BB%9F%E9%AA%A8
部位によって厚さは異なりますが、膝や股関節などでは2〜4mmで、加齢によって厚みは減少し、弾力性も乏しくなっていきます。
そして、弾力性が乏しくなってくるともちろん、衝撃吸収の役割を十二分に果たすことができなくなってきます。
高齢の方で膝痛に悩まされる方が多いのも頷けますね。
軟骨との関係とは?ヒアルロン酸、グルコサミンは期待できるのか
軟骨の働きですが、皆さんのイメージはどうでしょう?
軟骨が存在することで、間接の動きをスムーズにしているというのはイメージできるのではないでしょうか。
イメージのとおり軟骨は、本来は氷と氷の摩擦係数よりも小さいツルツルした組織ですが、加齢とともにバサバサした状態になり、ひどくなってくると膝に引っかかりが出てきたり、俗にいう「膝に水が溜まる」という状態になります。
膝痛に悩まれる方から、「ヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチンなどを飲めば治るんでしょ?」って質問をよく受けますが、基本的には残念ながら効果はあまり望めないかと思われます。
(中には症状緩和する方もごく僅かにいますが)
ヒアルロン酸注射をすれば、ヌルヌルしたものを入れるので一定期間は滑りが良くなり、結果的に痛みが減少しますが、自然吸収してしまうので同じことの繰り返しになってしまうのです。
(実際に定期的に通院して注射を打っている方もいらっしゃいますが、「定期的」に対応することでしか処置ができないというのが裏返しではないのでしょうか?)
そしてこの軟骨ですが、基本的に血管は存在しないので、酸素や栄養分が運ばれず、自力では再生はできないのです!!
注)膝の半月板(線維軟骨)は外側1/3に血管は存在
ちょっと強引かもしれませんが、「だから、この発明はすごい!」というわけですが、このように自力で再生できない存在を作製することで、記事中にもありますが安定した移植用の軟骨を生み出すことにつながり、スポーツ選手だけでなく、膝痛に悩まされる多くの方々の悩み解消につながる治療法につながるのではと期待しています。
今回は、″軟骨″というテーマを取り上げましたが、身体を創り上げている組織や働きを深く理解することで、ご自身のケアや患者様、お客様とのコミュニケーションにも活かしていただければと思います。