水分補給のタイミングとコンディショニング
2020.7.9
こんにちは。アスレティックトレーナーの新井です。熱中症のお話に続き、今回はその熱中症と密接な関係にある、運動中の「水分補給」についてお話したいと思います。安全かつ効率的に水分補給をするための補給内容やタイミング、量、そして水分補給と関連したコンディションの測り方をご紹介します。
こんにちは。アスレティックトレーナーの新井です。
前回は熱中症についてお話しましたが、今回はその熱中症と密接な関係にある、運動中の「水分補給の方法(内容、タイミング、量など)」と「コンディショニングチェック」についてお話したいと思います。
水分補給はパフォーマンスに大きく影響
最近では「運動中に水を飲むな!」という指導者の方はほとんどいなくなっていると思いますが、かつてはバテやすいとか集中力が失われるとか、精神力を鍛えるなどの理由で水を取らせない指導者が多かったような気がします。
それは大きな誤解ですよね。
ヒトの身体の約60%が水分でできています。
ヒトは発汗によって体温調節をし、体内の水分と同時に塩分が失われ、運動中の発汗量は1時間に2リットルにも及ぶことがあります。
このような多量の発汗によって脱水が体重の2%以上になるとパフォーマンスが著しく低下し、5%以上になるとめまいや吐き気がし、危険な状態に陥る可能性が生じてきます。
効率的な水分補給を行う方法とその内容
ただし、水分を補給しないと!と闇雲に水分を補給しても、かえって体内の電解質バランスが崩れて体調不良を起こしてしまうことがあります。
では水分補給をする際、”何”を”どのタイミング”で飲めば良いのか?
これについてお話ししていきましょう。
水分補給の目的は汗によって失われた成分を取り戻すこと
みなさんご存知だと思いますが、汗は真水ではありません。
個人差はあると思いますが、かいた汗をなめるとちょっと塩味が感じられるように、汗にはナトリウムが含まれています。
ということは、大量に汗をかいたときに水だけをごくごく飲むと、体内(厳密には血中)のナトリウム濃度が薄まってしまうのです。
さらに、ナトリウム濃度が下がってしまうと、身体が「これ以上薄めちゃだめだ」と水分を排泄したり、水分自体を欲しなくなってしまうということが起こってしまい、体液の量のコントロールできず、運動能力が低下するだけでなく、筋けいれんなどにつながったり、結果的に熱中症の原因となってしまいます。
このような状況を生まないためにも、汗に近い成分でナトリウムなどを含んだ水分(塩分や糖分をバランスよく含んだスポーツドリンクなど)を補給することが肝心です。
スポーツ活動中の熱中症対策に推奨する飲料の塩分濃度
日本体育協会がスポーツ活動中の熱中症対策に推奨する飲料として、0.1~0.2%(⇒ナトリウム換算すると40~80mg/100ml)と糖質を含んだものと記しています。
特に1時間以上の運動をする場合は4~8%程度の糖質も合わせて摂取することがおすすめです。
濃すぎても薄すぎても腸での吸収スピードは遅くなるので、上記程度が適切です。
そして温度も5~15℃くらいの飲料が吸収を速めてくれるので、キンキンに冷やした飲料は避けて摂取しましょう。
緑茶やコーヒーは効率的な水分補給とはいえない
アルコールはもってのほかですが、緑茶やコーヒーなどカフェインを含む飲料は利尿作用があるため、おしっこを沢山したくなりかえって脱水状態になることがあります。
運動時に限らず、夏場の暑い時期は喉を潤すことが目的になり、バーベキューや海などでビールなどを飲んで、水分を摂っていると感じている方もいらっしゃいますが、そのまま寝てしまい脱水症状を引き起こすといったケースも見受けられます。
アルコールによる酔いも重なり、危険度が増すケースもあるので、十分に注意して楽しんでくださいね。
効果的な水分補給のタイミングと量は?
運動強度により若干の違いはありますが、運動開始前なら250~500ml程度を、そして運動中は500~1,000ml程度を1時間おきに摂取するのが望ましいと考えらえれます。
トレーナーなどがいる環境であれば、時間などを切りながら水分補給のタイミングをコントロールできますが、個人で運動される方は細かくコントロールすることが難しければ、喉が渇く前に摂取してください。
・運動開始前:250~500ml
・運動中:500~1,000ml(1時間おきに)
※感覚的には「喉が渇く前に」のタイミングが理想的です!
簡単な水分補給量&コンディショニングのチェック法
前述した水分補給のタイミングや量については、外的な環境や運動強度など、状況によって変わってきます。
そこで、私が実際に合宿や遠征帯同時に行っている水分補給量とコンディショニングのチェック方法をご紹介します。
・運動前後に体重を測定
運動前後の体重を比較し、運動中水分補給が行われていたかをチェックできます。
・起床時、運動後の尿の色・量をみる
尿の色が濃い黄色で泡交じりのような尿は要注意。水分補給ができていない証拠で理想は透明or薄い黄色。起床時や運動後に全く出ない場合も要注意。
・起床時の体温・心拍数を測る
これはオーバートレーニングや風邪を引いていないかなど、体調を見るのに用いています。
屋外、屋内問わず、水分補給を意識しましょうこのように水分補給を行う際は、何を、どのようにして、どのタイミングで、どのくらい飲むかが大事になってきます。
指導者や選手は十分に理解し、上手に水分補給をしていかなければなりません。
水分補給は、かつての考えとは違い、運動能力を左右する重要なポイント。
トレーニングの一環として、取り組んでいきましょう!